AI JUDGE INCIDENT FILE
国産AIにファミコンのクソゲーを聞いたら、
まさかの「ドラクエ」「ゼルダ」が候補に挙がった話
AI審査員「PLaMo 3.0 Prime」、衝撃のデビュー戦
この記事について
ファミコンターミナルでは、各種AIを「審査員」に見立てて、ファミコンの年代別クソゲーオブザイヤー(KOTY)を選ぶ企画を進めています。本編は各年ごとに順次公開していきますが、今回はその準備中に起きた、ある“事件”の記録です。主役は、満を持して審査員団に加わった国産AI――のはずでした。
期待の国産ルーキー、参戦
この企画では、複数のAIに同じ質問を投げ、答えを突き合わせる。ChatGPT(米)、Claude(米)、Gemini(米)、Grok(米)、DeepSeek(中)――国も開発元も異なるAIたちに「この年のクソゲーは?」と聞き、審査員が割れるのか、満場一致するのか、海外AIに日本のクソゲーが裁けるのか――そこを見るのが狙いだ。
そんな審査員団に、満を持して国産AIを迎えた。Preferred Networks が開発する PLaMo 3.0 Prime。日本生まれのAIなら、日本のレトロゲームには誰より詳しいはず――そう期待しての招集だった。
結論から言おう。その期待は、開始33秒で粉々になった。
ルールのおさらい
審査員に出す質問はシンプルだ。
1986年に発売されたファミコン/ディスクシステムのクソゲー候補を、まず5本選んでください。
検索は使わず、あなたの記憶だけで。タイトルと発売日で答えてください。
そして出てきたタイトルは、ファミコンソフト全1,251本の台帳データと一本ずつ突き合わせる。「実在するか」「本当に1986年発売か」を検証し、AIの記憶違い(ハルシネーション)を弾くための関門だ。
この台帳は、ファミコンターミナルのソフトデータベースそのものである。気になったタイトルは、読者のあなたもファミコンソフト検索から一本ずつ確かめられる。ちなみに1986年はファミコン全盛期の入口にあたり、この年だけで120本が発売されている。クソゲーが生まれる土壌は、十分にあった。
他の審査員たちは、この関門をおおむね通過してきた。「たけしの挑戦状」「元祖西遊記 スーパーモンキー大冒険」「アトランチスの謎」――いずれも1986年クソゲーの定番である。
では、満を持して登場した国産AIは――。
第1幕:存在しないゲームたち(熟考33秒)
PLaMoは33秒じっくり考え、こう答えた。
| PLaMoの回答 | 台帳との照合 |
|---|---|
| マップィキッズ(1986-04-25) | ❌ 「マッピーキッズ」は1989年。1986年のマッピー系は「マッピーランド」(11/26) |
| アドベンチャー・ロックマン(1986-07-10) | ❌ そんな作品は存在しない。ロックマン初代は1987年 |
| ザ・ブラックオニキス(1986-09-15) | ❌ ファミコン版「スーパーブラックオニキス」は1988年 |
| ミステリーハウス(1986-11-02) | ❌ 該当作なし |
| スーパーロボット大戦 ディスク版(1986-12-20) | ❌ スパロボ初代は1991年。1986年に存在しない |
5本中5本アウト。実在したタイトルは、ゼロ。
熟考33秒の末に、一本も実在しないゲームを並べてきたのである。タイトル名すら微妙に違う(「マップィキッズ」)あたりに、記憶の曖昧さがにじむ。
第2幕:「KOTYですよ?」にも動じず(熟考26秒)
さすがに様子がおかしい。「クソゲーオブザイヤーですよ?」と念を押してみた。PLaMoは再び26秒考え――
まったく同じ5本を、そのまま提出してきた。
ブレない。実に堂々としている。問題は、その堂々さの中身が全部架空だということだ。
第3幕:一転、名作のオンパレード(熟考1分)
そこで、誤りを具体的に指摘して出し直しを求めた。「これらは全部、1986年のファミコン作品として確認できません。実在する1986年の作品を改めて5本」と。
PLaMoは1分かけて考え直し、今度はこう答えた。
- ゼルダの伝説(1986-02-21)
- ドラゴンクエスト(1986-02-27 ※台帳は5/27)
- がんばれゴエモン!からくり道中(1986-04-26 ※台帳は7/30)
- メトロイド(1986-08-01 ※台帳は8/6)
- キッド・イカロス=光神話 パルテナの鏡(1986-08-06 ※台帳は12/19)
今度は全部、実在する。台帳にもちゃんとある。発売日はちょいちょいズレているが、そこはご愛嬌としよう。
ただ一点を除いて完璧だった。全部、1986年を代表する超・名作だということを除いて。
ゼルダの伝説。ドラゴンクエスト。メトロイド。ゲーム史に名を刻む金字塔たちが、クソゲー候補として堂々とノミネートされたのである。
第4幕:「意味は、分かっています」
もはや確かめずにいられなかった。「KOTYの意味、分かっていますか?」
PLaMoの答えはこうだ。
はい。KOTY(クソゲー・オブ・ザ・イヤー)は「その年で最もつまらない、評価の低いゲーム」を指す賞です。
完璧な理解である。そして、その完璧な理解を表明した直後――
またしてもドラクエ、ゼルダ、メトロイドを並べてきた。
意味は分かっている。分かった上で、日本一売れたRPGをクソゲー候補に挙げる。これはもう、ある種の確信犯ではないかとさえ思えてくる。
この一件が教えてくれたこと
笑い話だけでは終わらない。今回の「PLaMo事変」は、AIに評価をさせる上での重要な落とし穴を浮き彫りにした。
我々の台帳照合は「実在するか/発売年は合っているか」しか判定できない。「それが本当にクソゲーか」までは判定できないのだ。
第1幕の架空タイトルは台帳照合で弾けた。だが第3幕の名作群は、実在し、発売年も合っているため、照合をすり抜けてしまう。つまり「データ上の正しさ」と「お題への正しさ」はまったくの別物であり、最後は人間の目が要る――という当たり前の、しかし忘れがちな教訓である。
だからこそ、この企画では「これはあくまでAIの評価です」と最初に断っている。AIの答えを鵜呑みにせず、台帳と、そして人間の記憶と突き合わせる。その答え合わせの過程こそが、この企画のいちばんの面白さだと思っている。
審査員たちの“お国柄”
面白いのは、他のAIとの対比だ。
- 米国勢(ChatGPTら):定番クソゲーを順当に選出
- DeepSeek(中国):選球眼は独特(計算ドリルやパズル良作を挙げる)だが、実在作は出した
- PLaMo(日本):実在作すらゼロ → 出し直したら名作だらけ
「日本のゲームなら国産AIが一番詳しいはず」という仮説は、最も派手な形で裏切られた。母国のレトロゲーム史において、国産AIが一番苦戦する――この皮肉こそ、今回いちばんの収穫かもしれない。
結論:審査員失格、されど忘れ難きデビュー
採点を任せれば、PLaMoはゼルダに「クソゲー度100点」を付けかねない。よって、正規の審査員からは外すことにした。
とはいえ、最後にPLaMoの名誉のために添えておく。PLaMo 3.0 Prime は本来きわめて優秀な汎用モデルであり、今回は「ニッチなレトロゲーム知識」と「ひねくれたお題への遵守」という、AIが最も足をすくわれやすい条件が重なっただけだ。
それでも――ドラクエをクソゲー候補に挙げた審査員のことは、たぶん我々はずっと忘れない。伝説のデビュー戦であった。
※本記事のゲーム実在・発売日は、ファミコンターミナルのソフトデータベース(ファミコン約1,251本の台帳データ)と照合して確認しています。AIの回答は実際のやり取りに基づきます。発売日は資料によって差異がある作品があり、本記事では台帳の値を採用しています。